Diary

昭和の男たちのそれを待つ

散歩の途中、昭和の風情の残る商店街から脇に入った路地で、とてもひさしぶりに「立ち小便」というものを見かけた。 二人連れのおじさんが、仲良く並んで。 すぐそばにはコンビニもあるし(そこにはトイレがある)、ミスタードーナツもあるし(そこにはトイ…

ライフが交差するいつもの場所

周囲に人がいると落ち着かないし緊張するし集中もできないので、できるかぎり避けたい(だから会社員をやっていると「職場では仕事できない」という深刻な問題に直面する)。 でも不思議なことに喫茶店やカフェでは多少騒がしいくらいが落ち着くし集中もでき…

ごく普通に永久にどこにでもあると思っていたもの

窓際の席に座り、道ゆく人々や辺りの商店の営みをぼんやり眺めながら時間を過ごすというのが、喫茶店の由緒正しい使い方のひとつだった。 問題は、路面にあって外の景色が眺められる窓際席を備えた喫茶店が年々少なくなっていることだ。 昔は(根拠も統計も…

見逃された公私にわたる小さな情報の数々

近所の小さな医院で新型コロナウィルスのワクチン接種を受けた。 予約時間は14時45分だったので、その5分ほど前に医院に行った。すると入り口の鍵は閉まっており、院外に3人が並んで待っていた。14時45分ぴったりに受け付けを開始するが、それまで中には入れ…

好ましい軽やか

隣の部屋の若いカップルは、この夏軽やかに引っ越していった。 暑い夏の午後、友だち数人が手伝いにきて数時間ばたばたしているなと思ううち、あっという間に部屋は空になっていた。その日のうちに管理会社がやってきてドアに暗証番号式のキーを取り付けてい…

倉下忠憲さんの新刊『ロギング仕事術』について

※この記事は9月14日に配信された「うちあわせCast 第134回:Tak.さんと『ロギング仕事術』について」のために作ったアウトラインを元にしています。同配信のために、著者には事前に献本していただいています。 9月14日発売の倉下忠憲さんの新刊『ロギング仕…

厚めの薄切り

「現実の世界では『厚めの薄切り』みたいなことが必要なんですよ」 — Tak. (@takwordpiece) 2023年5月20日 上のツイートの言葉はずっと昔、就活でOB訪問したゼミの先輩のもの。 「薄切りの技術」を学んで身につければ何かの役に立つと思いがちだけど、仕事の…

水曜の朝3:31

Macのファイルを整理していたら、10年以上前にiPhoneで撮った動画を見つけた。 当時働いていた職場で同僚が仕事をしている様子を背中から映したもの。彼女は一心不乱にデータを分析し、資料を作っている。周囲にも何人もの人が同じように黙々と仕事をしてい…

焦がれたものリスト

自分がどんな欲望を持っているか確かめるために「好きなもの」とか「欲しいもの」についてフリーライティングしてみるということを年末年始の習慣にしている。 で、今年は一歩進めて単に「好きなもの」「欲しいもの」ではなく、「焦がれたもの」を書き出して…

是正とライフ

自分自身の行動に対して「我ながらちょっと不誠実だな」と思っていたことがあった。口で言っていることと実際にやっていることが整合していないと自分でわかっていたけれど、まあいろいろ理由があってそのままになっていた。 波風立てたくないとか嫌われたく…

好きだったもののひとつ

昔好きだった場所をひさしぶりに歩いて、その場所で好きだったものがほとんど無くなっていることをあらためて確認する。 ずっと前からわかっていたことではあるけれど、年齢を重ねるということは、好きなものが消えていく経験の連続なのだ最近思う。 もちろ…

T町とS町とM町

実家のあるT町に足を踏み入れることが年々きつくなってきている。 何がどうきついのかということを言葉で説明すること自体がすごくきついのだが、簡単に言ってしまえば町の変化と自分の変化(あるいは不変化)が合わさった何かということになると思う。 T町…

個人の総合的な表現

このブログには「Diary」というカテゴリがあって、もちろんそれは「日記」を意味しているのだが、実際の「日記」が書かれることはまずない。 単なる「日記」をブログに上げることは、昨今なぜか抵抗がある。あるいは何者かによって抵抗を感じるような印象を…

遅れてやってくる痛み

年齢を重ねた筋肉痛の話ではなく。 学生の頃、何度も深夜に入り浸っていた実家最寄駅近くのミスタードーナツ。当時は午前2時までの営業だったと思う(入り浸る場所がミスタードーナツというあたりがいかにも自分らしい)。 レポートを書いたり試験勉強したよ…

(男の約束)

子供と大人の中間くらいの年の頃、ある件について父から「男の約束だぞ」と言われたその響きがどうにも居心地悪くて返事をしなかったことがあった。 それは家族の事情に関連したかなり重要な件について父と率直に話し合った後のことで、その結論自体に異論は…

Fくんに目を開かれた話と褒められた話(暗に階層を上がる話)

修士課程にいた頃、週1回の研究会の後によく二人で飲んでいたFくんという人がいた。 年は少し下。研究会に来ていた他の研究室の後輩、みたいな関係だったと思う。ちなみによく二人で飲んでいたとさらっと書いたけど、ぼくが人と積極的に飲みに行くというのは…

自分の存在が流動的に感じられる場所

カフェに一時間半ほど座ってノートを開き、ペンでいろいろと書きながら考え事をする。 手書きのフリーライティング。 あれこれと考えを巡らせる類いのことは、家の机よりもいつも作業をするコワーキングスペースよりもこういう場所がいい。 自分の存在が流動…

ひとりで何かをする定義(一部)

「ひとりで何かをする」ことが好きだし、そうしている人が好き。「みんなで何かをする」ことにはあまり興味がない。 でも「ひとりで何かをしている人たちでいっしょに何かをする」ことは好きだし、そうしている人たちも好き。 「みんなで何かをする」ことと…

結果を出さなきゃ意味がないかぼちゃのタルト

結果を出さなきゃ意味がない wordpiece.hatenablog.com ドトールであのときと同じ親子に会った。 駅のホームで「どんなときも結果を出さなきゃ意味がないんだからな」と言っていたお父さんと、口をとがらせて「わかってるよ」と答えていた男の子。 あのとき…

両隣の掃除機

休日になると、両隣から掃除機をかける音が聞こえる。 ■ 一方の隣はもう20年以上ひとりで住んでる男性。マンションの中ではうちの次に古い住人。たまに顔を合わせると(朝ごみを出すときか、夕方帰ってきたときが多い)、ちょっと会話したりもする。 名前は…

近況など

おそらくWord Piece史上もっとも更新が途絶えたわけですが、普通に元気です。 生活と仕事のリズムががらっと変わり(コロナ渦的な意味で)、いっぽうで最近は人といっしょに文章を作る作業が多く、ブログを書くモードになかなかスイッチできなくなっていたと…

後悔ではない切実な何か、どんな年齢にも当てはまる万能のフレーズ

「今になって、ようやくこれができるようになった」という気持ちになることがある。 そんなことを言っても意味はないし、人生に遅すぎるということはない。それでも、今しているようなことを、今しているようなやり方で、もっと早い時期に、もっと若いときに…

手を動かすことで頭と心が起動する

朝おきてコーヒーをいれたら、まずフリーライティングすることにしている。 不思議なことに、手を動かすと頭と心が動き始める。先に手を動かしたほうがいい。頭が先だと頭でっかちになりがちだし、心が先だと感情の掃きだめみたいになりがちだ。 コーヒーを…

普通に親切で、普通にやるべきことをやってくれた

バスの営業所に忘れ物の問い合わせをした。 家に帰ったらけっこう気に入っていたボールペンが見つからず、いろいろ考えるとバスの中で落とした可能性がいちばん高かったのだ。 電話に出た男性に、忘れ物の問い合わせをしたいのですがと伝えた。○○駅から○○駅…

モンブラン

彼女はとても優秀だけど、ちょっと押しが弱くて主張できないところがあるから、そのへんは直さないとねー、と言われていた新入社員のKさんが、客先での打ち合わせ帰りに立ち寄ったドトールで、ひとつだけ残っていたモンブランを頼もうとしていた指導役の先輩…

デコード

昔、交差点で信号待ちをしていると(中原街道のどこかの交差点だったと思う。助手席には妻がいた)、目の前の横断歩道をミニチュアダックスフントを連れた中年の夫婦が横断していった。夫婦の印象は「けっこう裕福そう」だったという以外には残っていない。…

枯渇とランダム

意味や目的のある文章ばっかり書いてると、いろいろと枯渇してくる。 意味や目的のある何かは意味や目的のことを特に考えずに書かれたことの中から「結果的に」生まれてくるものだから、意味や目的のある文章ばかり書いていると意味や目的が枯渇してくるのだ…

怒っていることについてのノート

めずらしく怒りにまかせて攻撃的な(当社比)ツイートをするということをした。あまりいいことではなかったと思っているけど、責任を持つという意味で消さないでおく。 興味があるのは、なぜそんなに腹が立ったのかということだ(気がつくと手の指から血が出…

そんなピンポイントなものだったとしたら

少し前のことだけど、地下街にあるスタバで窓際の席に座って仕事をしていた。窓の外には地下街を行き交う無数の人々。 作業の手を止めてその様子をぼんやりと眺めていたら、ふと何の脈絡もなく「あ、幸せだな」と感じた。 生活と人生(ライフ!)に関わるも…

お前にはできやせん

長い間、自分にとって新しいことだったりハードルが高いことに挑戦したりしようとするときに、頭の中で聞こえる声があった。 「お前にはできやせん」とその声は言う。父の声だ。それは子どもの頃から何かしようとするたびに父からかけられた言葉だった。 「…