ノスタルジック

横浜駅のJRの切符売り場で30代くらいのカップル(夫婦なのかどうかはわからない)が、路線図をふたりで指さしながらああでもない、こうでもないと議論していた。

都内のどこかへ行くルートを検討しているようだった。

しばらくして結論が出たらしく、ふたりは切符を二枚買った。

そして「意外と高いんだねえ」とか「乗り換えわかるかな?」とかそんな感じのことをささやきあいながら改札の中に消えた。

なぜ乗換案内を使わなかったのかはわからないけど(彼女の手にはiPhoneがあった)、ふたりの様子を見ていてなぜだかとても感傷的な気分になった。

そこには、駅の路線図を見て切符を買おうなどとは想像もしなくなってしまった自分には、もう手に入れることのできない経験があったからだ。