Word Piece 3

Tak.'s Blog

Scrapboxと幸福に出会うための最適なガイド

f:id:takwordpiece:20180810112634j:plain

倉下忠憲著『Scrapbox情報整理術』は、情報整理ツール(と、一応言っておく)Scrapboxの待望のガイドブック。

目次は以下の通り。

Prologue ようこそScrapboxへ

Chapter 1 Scrapboxの構成と入力方法

Chapter 2 Scrapboxはネットワーク構造で情報を整理する

Chapter 3 Scrapboxで知をつないでいく

Chapter 4 もっと便利にScrapboxを使う

Epilogue 知のコラボレーションで時代を切り開く

本書を読みながら実際にScrapboxを触っているうちに、自分はScrapboxのことを理解していたつもりで半分も理解できていなかったのだなと認識した。

もちろんScrapboxのアカウントは持っていたし、自分で使ってみてもいた(そして素晴らしいツールだと認識していた)のだが、それでも。

本書は著者の倉下さん自身が「おわりに」で書かれているように「初心者が迷わないようゆっくりと道案内をする」ように書かれている。

でも、実は初心者向けマニュアルとしてはChapter 1でほとんど完結してしまっている。Scrapboxの機能自体は非常にシンプルなので、それだけで充分に使い始めることができる。強いて言えば、Chapter 4がちょっと上級者向けのマニュアルといったところだろうか。「全機能」を網羅したら文字どおり分厚い「バイブル」になってしまう巨大アプリとは根本的に違う。

でも、シンプルなものほど奥が深いというのは本当だ。WorkFlowyと同じようにScrapboxも、その少なくシンプルな機能がほとんど無限の可能性を生み出している。だからこそScrapboxは見方によっては難しい。「何をするツールなのか」が、ひと言で言えないからだ。

Scrapboxが何をするツールなのか、どんなツールなのかの理解を助けてくれるのが、本書Chapter 2とChapter 3だ。特にChapter 2は本書のキモになっていると思う。

Chapter 2では、デジタル以前からの情報整理の手法やノウハウの歴史を簡単に振り返りつつ、Scrapboxでの情報(知識)整理の意味と位置づけを説明している。

簡単にいえば、Scrapboxに入れた情報は、階層的に整理されるのではない。強力な検索機能で情報の海の中から引き出されるのでもない。知識の「ネットワーク」として整理される。

ネットワーク型の情報整理は決して新しい考え方ではなく、これまでも各種のWikiがそのためのツールとして使われてきたし(本書でもScrapboxを「カード型のスムーズWiki」と説明している)、リンクを使ってページからページにジャンプし、文書同士がお互いの補遺となるような非線形的なテキスト(いわゆるハイパーテキスト)の考え方自体は、実はワードプロセッシングやアウトライン・プロセッシングと同じくらい古い歴史がある(バネバー・ブッシュまで遡ればもっと古い)。

でも、Scrapboxがなんといっても素晴らしいのは、それが実に簡単にできてしまうところだ。おそらくネットワーク型の情報整理をこれほど容易に行えるツールは他にないだろう。

ネットワーク型整理の意味とメリットを意識して利用することが、Scrapboxを使いこなすカギになる。

本書のChapter 2では、そのあたりの理屈と実践が、とてもバランスよく説明されている。ネットワーク型の情報整理の意味を説明した上で、それを活かすための実際の使いこなし(たとえば「小さな破片・断片を意識して情報を保存する」ことや、「リンクベースで書き、ハッシュタグを補助に使う」ことなど)が書かれている。Chapter 3は、その流れを受けて、プロジェクトの作り方の具体例などが説明されている。

ぼく自身、本書のChapter 2を読むまで、Scrapboxがぜんぜんうまく使えていなかったのだ。その機能と使い方は(一応)知っていたにもかかわらず、なんとなく「Evernoteっぽい」使い方をしてしまうのだ(見た目がちょっと似ているからかもしれない)。

本書はあくまでも入門書的な位置づけなので、Scrapboxのもうひとつの大きな特徴であるコラボレーション機能(整理した情報・知識を公開し、共有し、他者と共同で育てていく機能)や、マニアックなカスタマイズなど「さわり」しか触れていない部分もある。

でも、それらについての情報は、他ならぬScrapbox自身を使って多数の情報が公開されており、本書で得た知識があれば、そこから必要な情報を得つつ、自分の知識に応じて貢献することも充分できるはずだ。

本書を読んでイメージがつかめたおかげで、個人的なScrapbox利用率が少しずつ上がっている。もちろんまだ実験中だし、本当に使いこなしているとは言えないけれど。

特に面白かったのは、あるテーマについての参考文献からの抜き書きを入れたScrapboxのプロジェクトの中に、そのテーマについてのフリーライティング結果を入れたときだ。

フリーライティングの中で、これと思ったキーワードにリンクを張っていくと、自分の知識の元になった本のフレーズたちが魔法のように浮かび上がってくる。意識していなかったつながりに気づかされる。この感覚は、他にはないものだ。楽しい。

そんなわけで、本書はシンプルだけど奥深いScrapboxと、すれ違いを起こすことなく幸福に出会うための最適なガイドになると思う。