【告知】やままさんの『喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです』

編集をお手伝いさせていただいた、やままさんの新作『喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです―  5年間の主観たっぷり研究記録』が発売されております。 KDPによるセルフパブリッシングです。

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大作です。

5年間にわたって東銀座の「喫茶アメリカン」に通い続けた研究日誌。岡野純さんも書かれていましたが、ひとつの喫茶店との関わりで1冊本を作ってしまうなんてなかなかできることではありません。

内容はもちろんですが、その圧倒的な量と繰り返しの中で少しずつ積み重なる変化、そして変わらないこと。そんな総体から「アメリカン」の魅力が立ち上がってきます。

「アメリカン」は巨大サンドイッチといろんな意味で過剰な店内で有名なお店ですが、この本自体がアメリカン性を体現しているとも言えるかもしれません。

最初に書いたように、ぼく自身が本書に関わっているのであんまり手放しで褒めるのもどうかと思いますが、実は話は逆なのです。

もともとやままさんのブログ「言いたいことやまやまです」で「アメリカン」についての記事の蓄積をすげーなと思いながら「アメリカンの本を出せばいいのに」と思っていたわけです。

一軒の喫茶店に通い詰めた記録を(無名の個人が)商業出版できる可能性は限りなく低いかもしれませんが、セルフパブリッシングならできる。そしてセルフパブリッシングについてならお手伝いできる。そう思ってある日「いっしょに本を作りませんか」と声をかけました。

と言っても、おそらくやままさんの方にも本にするという構想はあったはずです。

で、蒲田の「歓迎」で羽根つき餃子を食べながらキックオフしたわけです。

最初は「ブログの記事を素材に編集して本を作る」ことをイメージしていたのです。古い記事は現役情報としての価値は少なくなっているから圧縮して、今のアメリカンについての書き下ろしを多くして、とかとか。

でも、やままさんがあらためて集めてきた記事を時系列に並べたものを読んでいるうちに「これは単純に時系列に並べる方が絶対に面白い」と思い直しました。やままさん自身が「研究日誌」という言葉を使っていたので、その「研究日誌性」を強調しようという方針がすぐに決まりました。

実用性を重視しすぎない、客観的にしすぎない。まさに「主観たっぷり」な内容にする。ブログの記事の熱量をなるべく削らないようにする。

さらに、アメリカンとの関係を恋愛に例えて「遠くから見ている段階からお近づきになり、やがて親密になる」という関係性の変化を強調したものにする、というやままさんのアイデアから、今あるような構成になりました。

研究日誌パート以外の全体の構成については、やままさんからアウトラインの案をもらい、それにTak.がコメントするような感じでやり取りしながら決めていったと思います(某メディアに掲載されていた店主インタビューの使用許可をいただけたのはありがたかったですね)。

セルフパブリッシングという話でいえば、もうひとつ忘れてはいけないのが素敵な表紙です。これはやままさんのCo-Edoスタッフ仲間、イラストレーター・デザイナーの松永みなみさんが手がけてくれました。かわいいし、やまま感とアメリカン感の両方が形になっていると思います。 

いろんなところで言ってますが、セルフパブリッシングの最大のネックのひとつは表紙なのです(ちなみにもうひとつのネックは「校閲」です)。

松永さんはタイトル決めのブレストにも参加してくれて(何しろタイトルがちゃんと決まらないと表紙が作れない)、かなり決定的な役割を演じてくれました。

EPUB化はTak.が担当したのですが、大変でした。主に量的な意味で。

今回も安心と信頼のでんでんコンバーターのお世話になりましたが、何しろ文字だけでなく写真が多くて、リミットぎりぎりでした(正確には97,000字、98ファイル。でんでんコンバーターは文字数は10万字程度が上限の目安、ファイル数は100が上限)。

最後、だいたいの校正が終わった後でやままさんが思いっきり全体に修正を入れて「きゃー☆」と思ったのはナイショですが、こういうものは最後あと1回の手直しをするかしないか、その気合い(敢えてその言葉を使う)が質に大きく影響するのです。

それが遠慮なくできるのは、セルフパブリッシングのメリットです。そしてその最後の修正で明らかに読みやすくなったと感じたことを付け加えておきます。

本書は最初から順番に読んでいくのが王道の楽しみ方だと思いますが(やままさんと「アメリカン」の関係が徐々に変化し、ついには店主さんインタビューまで敢行する)、毎日通勤時間やお昼休みにちょっとずつ読んでも楽しめるはずです。

「眠れない夜ちょっと人恋しいときに途中のページを適当に開いて読んでみる」という使い方も乙です。

もちろん、ちゃんと実用情報パートもありますので(メニューガイドから、アメリカンの作法まで)、アメリカン訪問のお供としても役に立ちます。