いかに努力してもそうはならなかった人へのヒント

佐々木正悟さんとの新刊『佐々木さん、自分の時間がないんです』について、前回の記事では、ぼく自身がポイントだと思った部分を挙げたわけですが、他にもポイントはたくさんあると書きました。ということで、もう少しその話をします。

会話の中に『7つの習慣』の話が出てきます。

「重要なこと」をするための「自分の時間」はゼロでいいと佐々木さんは言うけれど、じゃあたとえば家族と過ごす時間を自分は重要だと思っているのにそれができていない状況にどう対処するのか。

緊急なことにばかり振り回されている、その多くは自分にとって「重要」なわけでもないのに。そのとき佐々木さんの方法はどう対処するのか。

そんな文脈の中で交わされる会話です。

Tak. 求められているかどうかというよりも、「こうあるべきなんじゃないか」と自分で思っていることにすり替わっちゃいがちなところはあるかもしれません。

佐々木 『7つの習慣』に出てきた「時間管理のマトリクス」でいう「第2領域」を積極的にやろうという話でよくそうなっている印象があります*1。「重要なこと」を何か将来の課題みたいに扱うじゃないですか。でも多くはその場で解決できることか、あるいは将来にわたって解決の目処がたたないか、どっちかに見えるんです。今のお話でも、始発で出てタクシーで帰るという仕事の状況は、Tak.さんがどういう努力をしたところで徐々に解消されていくようには思えない。解決することがあるなら、Tak.さんの努力いかんに関わらず突然そうなる気がする。

 そう、まったくその通りなのです。

『7つの習慣』では、第2領域(緊急ではないが重要なこと)に注力すること、その優先度を上げることで、緊急なこと(第1領域と第3領域)に振り回される状況が徐々に減っていくと説かれます。そしてその前提になるのは「主体性」です。

緊急なことにばかり振り回されるのではなく、主体的に「重要なこと」を選び、実行する。後回しにされがちな重要なことを、意思を持って優先する。そうでないことも先手先手でやることで「緊急」化することを防ぐ。そうすれば状況は改善していくはず。

そのことに異議はまったくありません。でも前職での10年間、いかに努力しても(タスクを管理し、時間を管理し、「重要なこと」のための時間を必死に捻出しても)そうはならなかった。

念のために書いておきますが、『7つの習慣』は個人的オールタイム愛読書のひとつです。いわゆる自己啓発書を1冊選んで人に勧めろと言われたら、『7つの習慣』を選びます。若いときにけっこう強い影響を受けてもいるし、今でもそれは変っていません。

でも一方で、『7つの習慣』に書かれていることを実践しようとしてかえって苦しんでいるように見える人が少なからず存在することも感じています。

それはたぶん、『7つの習慣』が間違っているからではない。間違っているわけではないのに書いてある通りにならないのはなぜか。

その答えをたぶん、ひとりひとりが出さなければならないのだと思います。いちばんやってはいけないのは、がんばって「7つの習慣」を実践しようとして余計に苦しむということです。

いや、「7つの習慣」に限らず、GTDにしても他のさまざまなタスク管理、時間管理の手法にしても(あ、もちろんタスクシュートにしても)それは同じです。

自分自身の話でいえば、自分なりの答えを考えているうちに、『アウトライン・プロセッシングLIFE』という本になってしまった。

本書『佐々木さん、自分の時間がないんです』には、 この点についての佐々木さんの考えが示されていると思います。

もしかしたら本書の中でも賛否が分かれるところかもしれないと思うし、ピンポイントで「こうすれば解決します」という答えが示されているわけでもない。

でも、本書全体の中でこの部分の位置づけを感じてもらえれば、そういう状況、環境にある人にとっての選択のヒント(のひとつ)になるかもしれないと思うのです。

ぼく自身は、「主体性」とは何かということについて深く考えさせられました。

*1:『7つの習慣』に出てきた時間管理のマトリクス:縦軸を緊急度、横軸を重要度とした4象限のマトリクスのことです。第1領域は「重要かつ緊急」、第2領域は「重要だが緊急でない」、第3領域は「重要でないが緊急」、第4領域は「重要でも緊急でもない」。『7つの習慣』では第2領域、つまり「重要だが緊急ではない」ことに使う時間を増やすことが推奨されます。