タスク管理や知的生産の手法について語るときに難しいのは、理屈と実用性が必ずしも一致しないことだ。理屈がこのように正しいのだから(たとえばシステムやワークフローがロジカルに設計されているから)必ずうまくいく、というものではない。
「理屈の上ではうまくいくはずの手法が自分にとってはどうしてもうまくいかない」という経験は、多くの人が持っていると思う。
手法をうまく使えているとき、そこには何らかの形で理屈を超越した部分があることが多い。それはちょっとした考え方だったり態度だったり他の何かだったりするのだが、その部分を表現することが実際にはいちばん難しいことなのだと思う(多くのノウハウ解説では、そこはまるっと存在しないことにされる。ノウハウの範疇には入らないのだから当然だ)。
でも、理屈といっしょに「理屈ではない部分」を自分にインストールしてくれた本というものは確かにあって、ぼくにとってはたとえば木村泉『ワープロ作文技術』、野口悠紀雄『「超」整理法』なんかはそうだった。
いわゆる「実用書」とは少し違うけれど、第4版以前の『Macintosh Bible』(Amazonに見つからなかったのでリンクなし)や『UNIXという考え方』なんかも、個人的にはそういう存在だった。
共通点は、文章を楽しんで読んでいるうちに実用的な情報が(理屈を超越した何かも含めて)いつの間にか浸透してくるような感覚があること。
昔の方がそういう本は多かったように思うけれど、最近だとたとえば倉下忠憲『すべてはノートからはじまる』はそこに当てはまると思う。
個人的には、その「理屈を超越した部分」自体を手法の中に組み込むことをずっと模索してきたつもりなのだが、もちろん簡単にできることじゃないですね(精進します)。
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