アウトライン・プロセッシング入門

概要

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個人のためのアウトライン・プロセッシングの技法と考え方を徹底的に解説。実用情報だけでなく、後半ではアウトライン・プロセッシングの思想的な意味にも(少しだけ)踏み込んでいます。Kindle有料ストアで総合1位を獲得。

著者:Tak.
出版:セルフパブリッシング(KDP) 2015年

本書の目次

  • はじめに
  • Part 1 アウトライナーとアウトライン・プロセッシング
    • アウトライナーとは
    • アウトライナーの三つの基本機能
    • アウトライナーを選ぶ
    • アウトライナーを使うということ
    • シェイク
  • Part 2 文章を書く
    • ランダムなメモを組み立てて文章化する
    • 視点を組み替えてサマライズする
    • 発想から文章化までをアウトライナーで行う
    • 複数の文章をひとつのアウトラインで管理する
    • アウトライナーを「文章エディタ」として使う
  • Part 3 理解する・伝える・考える
    • アウトライナーで読む
    • アウトライナーで伝える
    • 使い捨てのアウトライン
    • タスク管理から「生活のアウトライン」へ
  • Part 4 アウトライナーフリーク的アウトライナー論
    • アウトライナーフリーク的Word論
    • アウトライナーが「アイデア・プロセッサー」であること
    • アウトライナーフリーク的Evernote論
    • フローをからめ取る
    • アウトライナーの新しい呼び名
    • チームでのアウトライン・プロセッシングへ
  • おわりに
  • 自由なアウトライン・プロセッシングのためのアウトライナー一覧

はじめに

みなさんは日常的にどのくらい文章を書くでしょうか。

仕事や研究でレポートや企画書を書くという方は多いでしょう。プライベートでブログを書いたりFacebookに投稿するという方はもっと多いかもしれません。

でも現代の生活で「書くこと」はそれだけではありません。今日やることのリストを作る。明日の会議で報告する内容を整理する。クライアントに自社製品についてうまく説明する方法を考える。旅行に出発するまでにやらなければならないことを書き出す。夕食の献立を考え、買い物リストをつくる……どれも広い意味で「書くこと」です。あるいは「考えること」と言い換えてもいいでしょう。

もしここにあげたような「書くこと」や「考えること」を日常的に行っているなら、アウトライナーは強い味方になってくれます。

アウトライナーを知らないという方も、「アウトライン・プロセッサー」という言葉なら耳にしたことがあるかもしれません。Microsoft Wordを使っている方なら、「アウトライン表示」というモードがあるのを見たことがあるかもしれません。あれがアウトライナーです。

実はWordは代表的なワードプロセッサーであると同時に、代表的なアウトライナーでもあります。しかしWordのアウトラインモードを日常的に活用している人はどのくらいいるでしょうか。周囲を見回した印象では、おそらくあまり多くはないのではないかと想像します。少なくともWordの利用人口からすれば微々たるものでしょう。

アウトライナーの不思議なところは、多くの人に有用性があるにも関わらず、驚くほど知られていない、あるいは誤解されているということです。「知ってる人は知ってる」「好きな人は好きな」ニッチなジャンルのソフトに留まっているのが現状です。

アウトライナーの恩恵を受ける人は、本当はたくさんいるのです。それが、広い意味での「書くこと」「考えること」を日常的にしている人々です。

「書くこと」「考えること」にアウトライナーは絶大な威力を発揮します。一度その考え方を理解し、馴染んでしまうと手放せなくなります。実際、私にとってアウトライナーなしで文章を書いたり考えを整理したりすることはもはや困難です。また、アウトライナーを知らなかった人が何かのきっかけでアウトライナーに触れ、熱狂的なユーザーに変貌していく様子を何度も見てきました。

学生時代(1990年頃)に当時のMacintoshで動作するMOREやActaに魅せられて以来、私はアウトライナーを使い続けてきました。そして使えば使うほどその奥深さを感じ続けています。20年以上経った今でも新しい発見があります。

ここ数年、ブログ及びTwitterを通じて知り合った方々との交流で、その発見は加速しています。何よりもこうした興味や発見を共有できる(そして私とはまったく違う方向性からアウトライナーの魅力を開拓してくれる)方々に出会えたことは大きな喜びでした。

そうした交流もひとつのきっかけとなって、2008年頃から個人サイトやブログで書き続けてきたアウトライナーに関する文章をまとめたのが本書です。

まだ触れていない人にはシンプルで奥深いアウトライナーの世界の一端に触れてもらうこと。すでに使っている人には一段とディープなアウトライナーの魅力を知ってもらうこと。それが本書の目標です。「書くこと」「考えること」を日常的に行っている人にとって、アウトライナーは人生が(ほんのちょっとだけ)変わるほどのインパクトがあるかもしれません。

アウトライナーの深遠な世界へようこそ。

本書の内容と、本書で扱うアウトライナーについて

本書のテーマは、個人のためのアウトライン・プロセッシングの一般的な技法と考え方です。

そのため、特定のソフトの操作説明や解説は最小限に止めています。特定のアウトライナーに依存したテクニックの紹介についても同様です。

本書は大きく四つのパートに分かれています。

実践的な活用例・テクニックは「Part 2 文章を書く」と「Part 3 理解する・伝える・考える」に集約しました。お急ぎの方(?)はこちらから読んでいただいてもかまいません。

おわりに

本書の最初で、アウトライナーを「アウトラインの形式を利用して文章を書き、考えるためのソフト」と定義しました。ここまでお読みいただいた方なら、この「文章を書き、考える」の広さと深さを感じていただけたと思います。

書く、整理する、考える、伝える、説得する、反論する、読む、要約する、理解する、管理する、組み立てる、体系づける、体系を壊す。アウトライナー、そしてアウトライン・プロセッシングの可能性は無限です。

本書で紹介した方法や考え方も、その可能性のほんの一部にすぎません(なにしろ最初から最後まで「個人的」な方法です)。使い方は、ユーザーの数だけあるはずです。ぜひ「自分のやり方」を考えてみてください。いや、日々使っているだけでオリジナルな使い方が自然に生まれてくるはずです。それがアウトライナーの柔軟性です。

本書の作成に際しては、もちろんアウトライナーを全面的に使用しました。

ベースとなったのは、2008年から2014年までの間にRenji Talk及びブログWord Pieceで公開したアウトライナー関連のエントリーです。個別のエントリーを書く作業には当初OPALを、2011年頃からはOmniOutlinerを主に使用しました。最近ではWorkFlowyも併用しています。

本書としてまとめる際には、まず関連エントリーのすべてに目を通した上で、OmniOutlinerで仮アウトラインを作りました。だいたいの構成ができたところでMicrosoft Word 2011に仮アウトラインをコピーし、見出し書式を定義しました。そして「未整理」と題した見出しの下に関連エントリーの内容をすべて貼りつけ、仮アウトラインに従って内容を整理していきました。

後は本文を読みながら修正→本文に合わせてアウトライン全体を修正→新たに必要になった本文を打ち込み→加わった本文に合わせてアウトラインを修正……を延々と繰り返しました(「シェイク」です)。

結果的には、作業の前半でOPALやOmniOutliner(本書の用語でいうとプロセス型アウトライナー)を、後半でWord(同じくプロダクト型アウトライナー)を使ったことになります。本編で書いた通りの分担です。

最後に電子書籍としての形を整えるためにScrivenerを使いました。

アウトライナーのおかげで本書の作成は楽に進みました。

……と言いたいところですが、そんなことはありませんでした。こんなことを書いてしまうとアレですが、アウトライナーがあろうと長文の作成が楽になんかならない、ということを身にしみて感じました。

という正直な話をした上で言えることは、それでもアウトライナーがあるのとないのとでは本当に大きな違いがあるということです。アウトライナーは、山の頂上にパラシュート降下させてくれたりはしません。それでも、六合目くらいまでは連れていってくれます。それはとても大きな違いです。

当初は、元のエントリーを内容別に整理し、古くなっている部分を更新し、稚拙なところをブラッシュアップするだけのつもりでした。しかし「シェイク」しているうちに内容はどんどん変化していきました。これも本編で書いた通りの現象です。たぶん、アウトライン・プロセッシングとはそういうものなのでしょう。

アウトライナーとの出会いは、大げさではなく私の人生を変えてしまいました。

学校の勉強が極度に苦手だった私に「書くこと」「考えること」を教えてくれたのがアウトライナーでした。アウトライナーに、そして最初のアウトライナー「ThinkTank」を生み出したデイブ・ワイナーさんに感謝します。

本書を読んで、少しでもアウトライナーの、そしてアウトライン・プロセッシングの魅力を知っていただけたなら、こんなに嬉しいことはありません。

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