アウトライナーと相談する

悩み事や困りごとがあったら(いろいろあるんだ)、とりあえずアウトライナーを開く。「アウトライナーと相談する」と個人的に呼んでいる。

アウトライナーに項目を立て、困りごとの内容を思いつくまま書き出すのだが、面白いのは5割くらいが書き出すだけで解決してしまうということだ。あるいはそもそも悩むほどのことじゃなかったことが確認できてしまうということだ。

じゃあ残った5割はどうするか。

書き出した項目を動かし、まとめ、見出しをつけ、整理してみる。いろいろやっているうちに、その正体がつかめてくる。そこで「これは自分にとって何か?」と自問してみる。そしてたいていはこう思う──なんだ、悩むほどのことじゃない。「たいてい」というがどのくらいかというと、感覚的には残った5割のそのまた8割くらい(←文系)。

多くの悩みごとや困りごとは、何かの正体やイメージが感覚的につかめていないことに起因するのではないかという気がする。

この時点で、悩み事や困りごとの9割ぐらいはなくなってしまったことになる。それだけでアウトライナーに書き出した目的を果たしたことになる。

それでも残った1割が、本当に困ったり悩んだりする価値のあることだ。それらについては、もちろんアウトライナーでどうすればいいのかを考える。

解決策を最初からロジカルに考えようとしてもいいけれど、まずは「結果的にどうなればいいのか」を書いてみると考えやすい。ここでもイメージをつかむことだ。

書けたら、そのイメージを実現するには何をすればいいのか考える。アウトライナーの上で考えるとは、書き出し、動かし、整理するだけではない。ブレイクダウンし、レベルアップすることが必要だ。

ブレイクダウンとは下位階層を作ること、つまり「このイメージはどんな要素からできているのか?」と考えることだ。たとえば具体的に「やるべきこと」がこうして生まれてくる。

レベルアップとは上位階層を作ること、つまり「このイメージは何に含まれているのか?」と考えることだ。「目標」や「考え方」や「判断基準」がこうして生まれてくる。

アウトライナーの機能にサポートされ、これからどこに向かえばいい(と自分は考える)のか、今何をすればいい(と自分は決めたのか)がクリアになってくる。数多くの問題や悩みを、ぼくはアウトライナーに助けられて切り抜けてきたという実感がある。

もちろん、それでも歯が立たない問題はある。ないはずがない。アウトライナーで考えればすべてが解決するほど人生は甘くない。

でも、逆にいえばほとんどのことはアウトライナーに向かって書き出し、考えることで(その過程のどこかで)解決してしまうとも言えるのだ。そう思えば生きることは楽になる。それなりに、少し。

アウトライナーで「文章を書き、考える」ことの意味と方法については『アウトライン・プロセッシング入門』『アウトライナー実践入門』、それを生活と人生に応用する方法については『アウトライン・プロセッシングLIFE』という本に書いた。