大切なことは(わりと)アウトライナーが教えてくれた

単なるネタのつもりだったのだが、考えてみれば良いタイトルだ(そんな本書いてみたい)。

個人的に「大切なことは(ぜんぶとは言わないけどわりと)アウトライナーが教えてくれた」というのはまぎれもない事実だから。

ひとつ例をあげるなら、上位階層と下位階層の関係の実感。

アウトライン(あるいはもっと広く階層構造と言ってもいい)の決まりごとでは、下位階層は上位階層の要素という意味になる。つまり下位階層の内容は上位階層が規定する。

こう言えば、たいていの人が納得してくれる。

けれども現実のアウトラインでは、規定されているはずの下位階層が上位階層に影響を与え、変えてしまうことがある。不思議とこのことを意識している人は少ない。

文章のアウトラインで考える。

文章のアウトライン(≒目次案)は、書かれるべき内容を規定するものだ。つまり上位階層が下位階層を規定するという前提のもとに作られる。

しかし実際に内容を書きはじめてみると、目次案を作ったときには思い至らなかった論理の穴に気づいたり、予定になかった面白い展開を思いついたりする。

結果的に書かれた内容が見出しと合わなくなり、内容に合わせて見出しの方を修正する。

下位階層(文章)が上位階層(見出し、構成)を変えてしまったのだ。

目標と行動の関係でも同じことがおこる。

目標を達成するためにプロジェクトを起ち上げ、タスクにブレイクダウンしてひとつひとつ実行する。

しかしあるタスクに取り組んでいるときに、見落としていた問題に気づく。あるいはより良い何かを思いつく。そこで上位のプロジェクトを、時には目標そのものを修正する。

下位階層(タスク)が上位階層(目標やプロジェクト)を変えてしまったのだ。

組織では、基本的に上位階層が下位階層を規定する前提になっている(会社もそうだし自治体もそうだし国家だってそうだ)。

しかし下位階層(社員や職員あるいは「現場」)には常に上位階層の枠から外れようとする力が働く。ポジティブに組織のためを思っての挑戦もあれば、意図的な反抗・反発もあれば、怠惰や能力不足もある。

その力が強まれば、上位階層の決定を覆したり、場合によっては組織全体を変えてしまったりする。

下位階層(構成員や現場)が上位階層(経営、上層部)を変えてしまったのだ。

すべて当たり前すぎるくらい当たり前のことだけど、不思議と意識されることは少ない。ぼく自身、本当にリアルに実感するようになったのは、アウトライナーを真剣に使うようになってからだ。

上の当たり前には続きがある。

下位階層が上位階層に影響を与え、変えてしまうことはある。

ただし、その変化が上位階層にとって受け入れがたいものだったとき、上位階層は下位階層にあらためて従うよう促す。従わなければ押し潰し、時にははじき出す。

上位階層の強権の前に、下位階層は最終的には従わざるを得ない。これもまた、アウトライナーを使っていて実感することだ。

それでも、上位階層と下位階層のせめぎ合いの痕跡は、どこかには残る。

押しつぶされ、はじき出された何かも、下位階層のそのまた下の、陽の当たらない見出しの下にくくって折りたたんでおくことができる(ぼくはその種の見出しに「未使用」とつけることが多い)。

それはもう上位階層の目には入らない。でも確実に存在している。

……という例をあげるだけでも、「大切なことは(わりと)アウトライナーが教えてくれた」と表現しても差し支えはない、と思う。

「わりと」は体感としては55%くらい。