(男の約束)

子供と大人の中間くらいの年の頃、ある件について父から「男の約束だぞ」と言われたその響きがどうにも居心地悪くて返事をしなかったことがあった。

それは家族の事情に関連したかなり重要な件について父と率直に話し合った後のことで、その結論自体に異論はなかったし、「約束」にも依存はまったくなかったのだが、とにかく返事をしなかった。

それはおそらく父から初めて対等な存在(それを父は「男」と表現したのだ)として扱われた瞬間だったのだが。

返事をしなかったことで父が傷ついたであろうことを思うと今でも胸が痛む。

でもそれは仕方のないことだし、父とのその種の齟齬に由来する傷の量で言えば、こちらもたぶん負けない。